5月15日から16日にかけて、慶應義塾大学の大橋香奈さんに龍谷大学へ来ていただきました。
大橋さんは研究の一環でドキュメンタリー『移動する「家族」』を作られました。
映像をただ上映するだけではなく、映像を観た人たちと家族について語らう場をつくる、という姿勢に私も共鳴しお呼びしました。
15日は笠井ゼミ、16日は講義「語りから未来を紡ぐ」と栗東市「かたつむ邸」、計3回110人あまりが観て語らうことができました。
映像では5つの「case」が、それぞれ登場する本人のナレーションで描かれます。本人も家族も移動し続ける家族もいれば、移動できない人もいます。
家族のありかたも範囲もいろいろあってよいのだと気づかせるものでした。
学生からの感想では「やっぱり家族って大事」というものもたくさんありました。私はむしろ、「家族はこうあるべし」あるいは「ふつうの家族」というような観念を相対化することにこそ、大橋さんの映像の意義があるように思います。
かたつむ邸では、子どもや孫がいる方たちで、家族観も(ほぼ例外なく20歳前後で子どものいない)授業の受講生たちとはかなり異なるものでした。
先祖代々土地に住む方からは「この地域を守らんといかんと思ってる」、「就職先も、この土地に残れるかどうかで選ぶ」という話も聞かれ、定住志向が印象的でした。
「定住」もまた、前提視され善き価値を与えられてしまいがちです。とりわけ、私が講義で扱う地域づくりの文脈では「家族」と「定住」が聖域的に基礎となっているように思うことがあります。
大橋さんも私も、自身が家族の移動を多く経験し、そのことが研究の一つの原体験になっていること、人生の語りから社会をみようとしていることなど、共通点がありました。
私は映像制作のような表現技法を持ち合わせていませんが、特に学生の真剣な眼差しや積極的なコメントをみると、こうした表現の魅力に気付かされます。
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