地域社会論研究室の住経験サブゼミです。
住経験サブゼミでは家族を対象に「住経験インタビュー」を行い、対象者の住居観を抽出する、という取り組みをしています。住経験とは、自分が今まで住んできた住居の遍歴や、そこでの暮らし方の記憶を指します。「あのころ住んでいた家はここが好きだった」「この時こんな出来事があって…」「お隣さんとの関係はこうだった」など、対象者が様々な記憶をたどりながら生き生きと話して下さるのを、聞いていてとても楽しい取り組みです。
そして、このような対象者の語りの中から、住居観を抽出していきます。また、ライフステージによって優先して想い起こされる記憶の種類に違いがあります。一人暮らし時代と子育てをしている時代では、住居に求めることも違いますし、それに伴って想い起こされる記憶にも差が出てきます。さらに、家族の住経験を聞いていると、小さな出来事を鮮明に覚えていたり、住居の話をしたとたんに思い出すことがあったりします。
人生史や記憶が、住居と強い結びつきがあることを実感できるところに、「住経験インタビュー」の面白さがあると思います。
10月9日には大阪工業大学にて、京都大学大学院、北海道大学大学院、大阪工業大学、近畿大学、明石工業高等専門学校の皆さんと合同発表会を行ってきました。
住経験インタビューはこれまでは建築を専攻する方たちが取り組んできたもので、私たちのような社会学の学生が参加するのは初の試みだったようです。建築学科の皆さんの発表の完成度の高さに圧倒されつつ、様々な住経験のエピソードを聞くことができたのは非常に楽しい経験でした。
その中で、独自の視点を入れられたら、という考えから、私たちは「住居」に限定せず「地域とのかかわり」についても積極的に聞き取りを行って発表をしました。発表の中でも笑いが起こる場面も多々あり、和やかな雰囲気で楽しく発表させていただきました。お互いに普段学んでいる学問とは異なる視点が入った発表で、私自身とても刺激を受けました。
私たちは家庭内や近所でのかかわりに重点を置いて、そちらの角度から考えることが多かったのですが、建築学科の皆さんは、家の使いやすさや個人的に思い出に残っている部分を多く発表に盛り込んでいて、重点を置いている部分が若干異なっているのだと感じました。学んでいる学問の違いによって、語りの中から抽出する要素が変化してくることが非常に興味深いと思いました。