研究テーマ
◆日本生活学会・生活学プロジェクト・2016年度、2017年度、2018年度(連続採択)
- [2016]笠井賢紀「左義長に生活様式の変化をみる:栗東市目川・岡地域を事例として」
- [2017]笠井賢紀「左義長の社会的機能と空間的変遷に関する研究(滋賀県栗東市)」
- [2018]笠井賢紀・粟井俊貴「 新しい食と旧い食:吉備中央町のハラルフードと郷土食を事例に」
プロジェクト概要
▼日本生活学会のウェブサイト http://lifology.jp/seikatsuproject/
[2016年度]

本プロジェクトは日本各地に伝わる「左義長」について、栗東市の目川地区・岡地区を中心と して研究を行うものです。他の民俗同様に左義長も地域ごとに多様性を見せ、同じ地域でも変遷を遂げていますが、本プロジェクトでは、多様性・変遷自体だけではなく、その多様性 ・変遷はどのような生活様式の変化によるものか、そして「なぜ」そのような多様性・変遷を 経験・選択するにいたったのかを調査を基に検討するものです。
たとえば目川地区では以前まで3か所で行われていたものが現在では1か所に減じていたり開催日が代わっていたり、竹を組む際に用いるのは以前から変わらず藤蔓であったりし、岡地区では蔓の代わりに番線を用いたり、開催日について議論が巻き起こったりしています。また、両地区とも藁や竹の集め方は農業人口・面積が減じたことにより変化を余儀なくされています。

左義長は、材料(竹、藁、蔓)や燃やすもの(門松、鏡餅、書き初め等)において生活様式と大きな関連を持った行事である。本プロジェクトでは「どうであるか」、「どう変わったか」に加えて「なぜそう変わったか」を対象とするものであり、民俗調査の一面を色濃く持ちながらも、意思決定や組織論、あるいはコミュニティ論にも横断的に関わるものです。「左義長という特別な日の特別な儀式」を対象としつつ、左義長のあり方に、日々の暮らしの変化や住民の意思決定プロセスが埋め込まれており、それを掘り起こす作業は生活学的な営みと言えるでしょう。
[2017年度]
滋賀県栗東市をフィールドにして、小正月の行事「左義長(さぎちょう)」の変遷を追う、昨年度の生活学プロジェクトの発展版です。1年目は2地区での聞き取り調査でしたが、2年目の今年度は範囲を市内全域に広げるとともに、空間的(地図)・時間的(年表)な把握と表現に試みます。左義長の調査を通じて、地域社会のあり方や子どもの社会化機会についても論じられればと考えています。
[2018年度]
岡山県(とくに吉備中央町)をフィールドとして、食をテーマにした研究を進めるプロジェクトです。吉備中央町はハラルフード先進地であり、米粉のハラル認証取得や商品開発を進めています。他方、「くさぎ菜」という伝統的に郷土食に用いられてきたとされる食材に代表されるように、最近では食べられなくなってきたものもあります。伝統的ではなかったものの地方創生の資源として用いられる新しい食と、伝統的ではあったものの徐々に共有の経験が失われている旧い食が、地域の生活においてどのように受け入れられ共存・共生しているのかを探ります。
調査
[2016年度]

本プロジェクトの調査は栗東市の目川自治会、岡自治会の協力を得て自治会長による紹介と、その方たちからの紹介とで調査に応えていただきました。同調査は、次の通り2016年12月16日から2017年1月27日まで8組10名の方に対して行い、継続予定です。
- 2016年12月16日/岡/1940年生(76歳)
- 2016年12月17日/岡/1936年生(80歳)
- 2016年12月17日/岡/1936年生(80歳)
- 2017年1月13日/目川/1931年生(85歳)
- 2017年1月14日/岡/1933年生(83歳)
- 2017年1月15日/目川/1950年生(66歳)・1948年生(69歳)
- 2017年1月21日/目川/1950年生(66歳)・1950年生(66歳)
- 2017年1月27日/岡/1954年生(62歳)
[2017年度]
本プロジェクトの調査は龍谷大学と栗東市との包括連携協定に基づき、栗東歴史民俗博物館と連携し、栗東市内の全123自治会を対象とした質問紙調査を行いました。同調査は、次の通り2017年3月5日から同25日までを回答期間とし、その後も継続して回答を受け付けています。
発表
[2016年度]
本プロジェクトの成果は2017年5月21日に日本生活学会第44回研究発表大会にて口頭発表しました。
また、同学会の公式ウェブサイト内コーナー「日本生活学会の100人」にて、本プロジェクトを中心としたインタビュー記事が掲載されています。
▼「日本生活学会の100人 vol.5 笠井賢紀氏」http://lifology.jp/people100/vol005kasai/
[2017年度]
本プロジェクトの成果は2018年5月27日に日本生活学会第45回研究発表大会にて、口頭発表およびポスター発表を行いました。