慶應義塾大学出版会より、次の本が刊行されました。
笠井賢紀・田島英一(2025)『パブリック・ヒストリーの実践――オルタナティブで多声的な歴史を紡ぐ』
私(笠井)は筆頭編者を務め、第1章とあとがきを執筆しました。あとがきは出版会サイトから一部お読みいただけます。
▼書籍情報(出版会サイト) https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766430059/
▼あとがき試し読み(出版会サイト) https://note.com/keioup/n/n0f9deadde5ee
パブリック・ヒストリーについては、世界的に、特に欧米においてはかなりの広がりを見せている概念だと思われますが、日本ではこの名前を冠したまとまった論文集といえば2019年の『パブリック・ヒストリー入門』が代表例でした。本書は、直接的なつながりは一切ないものの、同書から強くインスパイアを受けて編まれたものです。
パブリック・ヒストリーのパブリックは――たとえばコミュニティという言葉のように――かなり多義的で、論者によってどのような性質を帯びさせるかが相当に異なるので、第1章ではその点の整理を図っています。主概念といえるパブリック(公共性)のほか、脱領域性・実践性・当事者性・発話可能性・民主性・抵抗性・物語性・多声性・対立性・媒介性・永続性・可謬性といった諸属性を抽出しました。これらのすべてではないものの複数の属性を帯びながら、各歴史実践が展開されています。
本書は、慶應義塾大学東アジア研究所叢書として刊行されました。東アジア研究所ならびに高橋産業経済研究財団に感謝申し上げます。