左義長調査について4,5ページの簡単なレポートにまとめたものが公刊されました。
笠井賢紀(2020)「社会と調査をつなぐ―左義長を中心とした地域社会調査の事例から―」『社会と調査』25,pp68-72
「地域社会における○○」は地域社会の側を交換可能にしてしまうが、「○○からみる地域社会」で交換可能なのは扱っている主題の側である。つまり同じ地域社会とともに他の主題の研究が可能になり、信頼関係と多様な主体の参画は継続的に生まれ・活かされ続ける。上述したように調査が先行するのではなく、関係性構築が先行することで実現された「社会と調査をつなぐこと」が研究課題を乗り越えることにもつながる。冒頭に確認したとおり、今回の場合、先行研究における主題への偏りの克服や、現代の地域社会における左義長の意味づけへの接近がそうした課題にあたるものだった。私たち地域社会の調査に従事する者は、調査地被害に自覚的であるべきであることは確かだ。しかし、それは調査に際して無数のエクスキューズを唱え続けることを指すのではない。継続的な関係性を前提とし、調査よりも関係性が先行するような調査観が地域社会と共有されているとき、私たちは「負担を地域社会に掛けてしまうこと」について自分で思い悩み続けるのではなく、そのこともまた地域社会と語らい続けなくてはならない。