CM特論 醍醐寺合宿2017

2015年度から京都世界遺産PBLという枠組みで世界遺産の醍醐寺とともに授業を展開しています。(概要はこちら

この科目では毎年1回、夏に醍醐寺で合宿を開催してきました。今年度も2017年6月24日~25日に行いました。

合宿の目標は「課題発見の糸口を見つけること」です。多くのPBLでは合宿や集中講義は、何かのイベント企画を練ったり実際に行ったりする時間だと思いますが、この科目では「これから何に取り組むべきか、その端緒にたどり着ければ……」という極めて禁欲的な位置づけです。


合宿は1日目の13時から2日目の正午までの短い時間です。

1日目はともかく情報をインプットします。最初は担当教員(笠井)からのPBLに関する講義。これは、合宿までに2ヶ月の講義を経ている受講生にとっては復習です。ただし、合宿には醍醐寺の僧侶や職員にも参加してもらっているので、毎回必ず実施します。
1日目に学生がもっとも緊張しながらも楽しみにしているのがグループ・インタビュー。

グループにわかれ、2-3部署の僧侶・職員に来ていただき、課題の糸口を探ります。

「何が問題ですか」といった短絡な質問が、むしろ課題発見の妨げになることを受講生は既に知っているので、丁寧に質問を重ねます。

インタビューが終わり、反省会・共有会を経て、基調講演を伺います。今年度は総務部長の仲田順英師からのお話でした。

雨月恩賜館で醐山料理に舌鼓を打ったあとは、夜の部。毎年、渡邊慧海師(公益性について)、飯田俊海師(文化財について)のお二人から専門の講演をいただいています。学生たちもよく聞いて質疑応答も盛んにしていました。

最後に写経をして就寝です。


2日目は朝に、弥勒堂で写経奉納も含めて法要をしていただきました。

朝食が終わると午前中いっぱいを掛けてワークショップです。1日目は情報のインプットに終始しましたが、2日目はそれを整理・収束させてからアイデアを導き出す過程です。若い僧侶も2人参加しました。

【ワーク1】(ブレインストーミング)

3グループにわかれ、前日にインプットしたあらゆる情報をカードに書き出します。受講生は事前の講義で、ブレインストーミングの目的(たくさんアイデアを出すこと)と注意事項を学んでいます。

各グループ、70ほどのカードができました。

【ワーク2】(分類)

グループごとに、カードを分類していきます。受講生は事前の講義で、分類方法には正解はないことを理解しています。

かなり分類がうまくいったところと、果たしてこれが分類と言えるのだろうかという論理矛盾をはらんでいるところと明確にわかれました(リーダーシップを発揮している学生が事前講義をしっかり理解していたかがポイントのようです)。

【ワーク3】(ワールドカフェ)

分類を元に、「課題になりそうなこと」を自由にワールドカフェ形式で話してもらいます。受講生は事前の講義で、ワールドカフェの利点(他花受粉)や方法を理解しています。

ワールドカフェは、いろいろとグループを巡るので、やり方を工夫しておかないと全テーブルで、同じ声の大きな人の意見ばかりが共有されてしまいます。今回はしっかりと、ベースとなるテーブルごとに異なる議論が紡がれたようです。

【ワーク4】(プロジェクト立案)

ワールドカフェで話したことを踏まえ、見つけた課題の糸口を信じ、複数のプロジェクトを立ててもらいます。

受講生は事前講義で学んだことを参考に、各プロジェクトの目的、方法、実現可能性、優先度、実施までに必要な期間、活用できる資源、障壁となる要素を手早く表に整理しました。

 


プロジェクトの発表後には、聞いていた僧侶からの講評、部長からの閉会挨拶をいただきました。

今後は、合宿でまずは立ててみた企画案をもとに、これらを組み合わせたり見直したりする中で【醍醐寺が求めること】や【大学生が関わることに意義があること】を今年度の課題として設定します。

(アイデアの提供だけで醍醐寺にとって意味が生じるものもあるでしょうから、そういうプロジェクトまでPBLで取り組む必要はありません。)

毎年「こんな短い時間でうまくワークショップができるだろうか」とか「1日目の情報インプットは必要だろうか」と設計者(designer)である教員としては悩むのですが、どうにか、今後の展開に向けたいい形が毎年できるから不思議です。

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